2025年1月9日 ことし初回の投稿です

新しい年となり、松の内も過ぎました。日々、新聞に目を通し記事をみると何か書きたくなるのですが、そのままにしがちでした。今年はなるべく、考えたことを記録していきたいです。

中日新聞の日刊を購読しています。本日(2025.1.9)の地域経済のページに豊橋市出身の北 奈央子さん(45歳)の記事がありました。この記事を読んで考えたことを今回は書きます。

北さんは2019年に「ジョコネ。」という企業をたちあげ社長となりました。屋号は、女性とコネクションからつくったそうです。句読点がついていますがそれについての解説は記事にありませんでした。これと似たものに、私(小栗)は「モーニング娘。」しか例が思い浮かばず、ネットで調べてみましたところ、グループ名の「。」の由来は “「いろいろついてくる、盛り沢山、おトク感、親しみやすい」を表したもの”とありました。ジョコネ。の場合はどうなのか興味があります。

北さんは早稲田大学卒業後、アメリカ医療製品大手のジョンソンエンドジョンソン、ほかにも医療関係の会社に勤務しました。米国などへ海外出張も数多かったそうです。それでも、子育てをしながら仕事をするのが当然という考え方に気づいたのが、2016年に聖路加国際大大学院看護学研究科にすすみ、そこでともに学ぶ看護師さんたちに出会ってからだったそうなのです。これは私にとって意外でした。外資(アメリカ)の大手企業に勤め、海外出張を多くこなしながらも、北さん自身は子どもを持つ女性が仕事に邁進できている様子を目の当たりにできなかったのでしょうか。なぜでしょう、たまたま、北さんの仕事の場では子育て中の女性と接点が無かったということでしょうか。

日本でも、看護師さん、保育士さん、学校の先生は、何十年も前から子どもをたくさん産んでいます。それは産んでもちゃんと職場復帰できる環境が整っているからです。もとに戻れることが大事。産休、育休の充実が復帰を叶えています。そんな看護師さんたちに囲まれて北さんは育児と仕事、両方するのが当たり前と感化されたのですね。…この、三つの職種以外でも産休・育休を取っている話を患者さんからよく聞くようになってきました。どんどん当たり前になって欲しい。

また、子宮内膜症と診断され治療をうけた経験を持つ北さんは、大学の外でも女性の健康への知識を深めたそうです。”「自分自身のからだのことなのに、なぜ私はこんなに無知だったのか」との思いを強くした”と。私も日々、外来で仕事をしていて思います。多くの女性が外性器、内性器の部位、名称について知識がなく排卵と月経の関係を理解していません。私は医師となり、また産婦人科にすすんだので色々詳しくなったけれど、そうでなかったら全く違ったろうと思います。日本は受験に必要な学科には必死にとりくみますが、健康教育がひどく遅れているのが問題なのです。たとえば保健体育の授業はどうでしょう、雨降り体育授業の域を出ていないのではないでしょうか。中学校保健体育の教科書を読むと素晴らしいことがたくさん書いてあります。この内容をきちんと習得できたらいいのに、と思います。

ボディイメージ 

2024年12月2日の中日新聞で、若い女性のボディイメージの調査結果について記事がありました。マイウェルボディ協議会という民間団体が発表したものです。

https://www.instagram.com/p/DDGvuVfSw-1

マイウェルボディ協議会のインスタグラムに記事が載っていました。(上のリンクから記事をみることができると思います)

女性のからだのイラストが、やせた方からふくよかな方まで9種類ならんでいて、自分がどれにあたるか、また理想はどれか、を聞くものでした。すると自分のイメージは痩せた方から四番目。理想は痩せたほうから3番目という回答が最も多かったのでした。

この記事を外来において、若い、痩せた患者さんに聞いてみたところ、アンケート結果どおりの回答を、みなさん、おっしゃるのでした。

同協議会の代表幹事、順天堂大学の田村好史教授は、”メタボリック症候群という名前ができたことで基準がきまり、メタボ対策が法律化され世間に広く認識された。同様に、痩せていて健康に問題がある状態をさす名前をつくろう、”と提案しています。

もう20年くらい昔、「はねるのとびら」というお笑い番組で塚地武雅さんが「豚地クリニック」の豚地医師を演じていました。そこへやってきた女優さん(すらっと背が高く、やせています!)をひと目みるなり「ヤセボリックです!!」と”診断”した場面を私は鮮明に覚えています。痩せボリック、とっても言い得ていると思います。

痩せた人は、肥満の人と同様、内分泌環境がよろしくないのです。

痩せの問題については、私は、豚地クリニックの豚地先生より前から患者さんに一生懸命に説明してきました。でも、無力感にうちひしがれます。痩せを改善できる患者さんが少ないからです。

4年前にもブログをかきました ↓ タイトルをクリックすると記事に飛びます

2024.9.8 村瀬幸浩さん市民公開講座の報告

2024年9月8日、名古屋市中村区、フジコミュニティセンターにおいて愛知県保険医協会主催の市民公開講座が開催されました。私は主催者側のひとりで、当日司会をつとめました。講演後の報告記事を書きます。

参加者は現地59人とウェブ134人、合計193人でした。講演後にとても多くの感想をいただき、参加者の皆さまそれぞれ意識をもって聞きにいらしたと実感しました。

講演のタイトルは「思春期・青年期の性の学び〜新たな時代 切りひらく力を〜」でした。新たな時代というのは、LGBTQ+アセクシュアル(このごろはSOGIと表現されるようになっています)といった多様性を認め共生する時代という意味です。

性は生殖だけでなく、歓び、たのしむためにある。そこに光をあてる。ゆえに、予期しない妊娠を避ける権利があることも肯定されるのです。性の問題は知的な問題であり、下半身の問題ではありません。人間らしく生きるためのポジティブなテーマです。何度も、ポジティブ、を強調されました。

講演のはじめに、性に関する意識を新たにする過程で男性は、足場(いままでの価値観、既得権、男性の優位ということと思います)が崩れるのが嫌だから、なかなか変わろうとしない。しかし、新しい自分の足場を築くことが必要だと話されました。何度も拍手をしたくなりました。

大人として、子どもに「自分はこう思う、」と言えることが必要。大人が勝手に決めた枠組みを子どもに押しつけないこと。

失敗のない人生はなにごともしなかった人生。失敗したら、やりなおす。親は励ます。

つれあいと、考えを口にしあえる関係性が大事と。…そのためには、相手との対等さが必要です。

性教育は、法的にいまだ、定まっていないと話されました。…そうなのです。私たち性教育をすすめる活動をしている人間は以前からこれを問題としています。日本中の子どもたちが均等に受けられる性教育を、いいかげんに学校教育にカリキュラム化するべきなのです。フロアから、そうするためにはどうしたらいいのかという主旨の発言がありました。性教育が必要で、早急にかなえるべきという世論をつくることだと、私は司会者として発言しました。日本は民主国です。たとえば性教育をすすめる政党を支持する、性教育についてのパブリックコメント募集があれば、性教育を進めてほしいと投稿する、といった私たち市民ひとりひとりの行動が必要でしょう。ひとまかせにしていては何も変わりません。私たちは今の世を生きる、当事者なのです。

講演の終わりのほうに、老年期に豊かな性を持とうという話がありました。村瀬さんの配偶者が閉経後、そして村瀬さん自身が勃起射精がなくなってきてからのほうが、性生活が豊かだった、たのしめたとのことです。勃起も射精も無くってOKなんです。勃起にこだわる価値観(古い「足場」ですね)を脱ぎ捨てられているから可能なことだと思いました。そして互いを尊重し信頼しているからこそでしょう。これまでのふたりが、性生活のみならず関係性が豊かだったからこそです。

村瀬さんの時代、私の時代もそうでしたが、女子だけ性教育(というより、月経の処置教育ですね)を受けていました。女子は妊娠するから、という理由ですね。でも、男性は孕ませる性なのですから教育が要らないはずはありません。男の子にこそ、からだについての知識、生理的な学びだけでは不十分で、相手を尊重する人権意識を育てる必要があるはずです。

最後に。村瀬さんは長年つれそった大切な配偶者を最近、亡くされたそうです。たいへん大きな生活の変化に襲われているが、村瀬さんはそれを本に著したいとのことです。辛い変化なのだろうにと拝察しますが、誰も書いていないことだから、書くのだとおっしゃっていました。来年には出版されるのではと思います。本が出たら早速手に入れたいと思います。

東京在住の村瀬さんですが、出身は名古屋市です。「東京から名古屋は近いよ」と、9月の暑いさなかでしたが名古屋までおいでくださいました。本当にありがとうございました。

2024年9月8日 市民公開講座のおしらせ

来月、9月第二日曜日である8日の午後2時からです。院長(小栗)が所属する、愛知県保険医協会のリプロダクティブ・ヘルス部が主催する市民公開講座です。どなたも無料できけます。

現地参加のほか、オンラインで自宅からでも聞くことができます。

演者は村瀬幸浩さん、性教育界の大御所です。今もお元気で活動中です!

申し込みはオンラインまたはファックスで、できます。

ウェブ受講は地理的な問題や天候の問題に関わりなく便利ですね。

村瀬先生のあたたかい人柄に触れられる、現地参加もおすすめです!

著書は学問的な本から一般の方に分かりやすい本まで数多く、私は村瀬先生の著書のおかげで性教育を下地から学ぶことができました。そして専門学校での授業や講演を行ってきました。本の内容はけっして難解ではなく、なにより、腑に落ちるのです。

最近ですと、「おうち性教育はじめます」が大評判です。2020年に3歳から10歳くらいまでの内容で出たもの(左)、そして2022年の思春期・家族編(右)があります。画像はAmazonで、2024.8.12に掲載されていたものです。