2024.9.8 村瀬幸浩さん市民公開講座の報告

2024年9月8日、名古屋市中村区、フジコミュニティセンターにおいて愛知県保険医協会主催の市民公開講座が開催されました。私は主催者側のひとりで、当日司会をつとめました。講演後の報告記事を書きます。

参加者は現地59人とウェブ134人、合計193人でした。講演後にとても多くの感想をいただき、参加者の皆さまそれぞれ意識をもって聞きにいらしたと実感しました。

講演のタイトルは「思春期・青年期の性の学び〜新たな時代 切りひらく力を〜」でした。新たな時代というのは、LGBTQ+アセクシュアル(このごろはSOGIと表現されるようになっています)といった多様性を認め共生する時代という意味です。

性は生殖だけでなく、歓び、たのしむためにある。そこに光をあてる。ゆえに、予期しない妊娠を避ける権利があることも肯定されるのです。性の問題は知的な問題であり、下半身の問題ではありません。人間らしく生きるためのポジティブなテーマです。何度も、ポジティブ、を強調されました。

講演のはじめに、性に関する意識を新たにする過程で男性は、足場(いままでの価値観、既得権、男性の優位ということと思います)が崩れるのが嫌だから、なかなか変わろうとしない。しかし、新しい自分の足場を築くことが必要だと話されました。何度も拍手をしたくなりました。

大人として、子どもに「自分はこう思う、」と言えることが必要。大人が勝手に決めた枠組みを子どもに押しつけないこと。

失敗のない人生はなにごともしなかった人生。失敗したら、やりなおす。親は励ます。

つれあいと、考えを口にしあえる関係性が大事と。…そのためには、相手との対等さが必要です。

性教育は、法的にいまだ、定まっていないと話されました。…そうなのです。私たち性教育をすすめる活動をしている人間は以前からこれを問題としています。日本中の子どもたちが均等に受けられる性教育を、いいかげんに学校教育にカリキュラム化するべきなのです。フロアから、そうするためにはどうしたらいいのかという主旨の発言がありました。性教育が必要で、早急にかなえるべきという世論をつくることだと、私は司会者として発言しました。日本は民主国です。たとえば性教育をすすめる政党を支持する、性教育についてのパブリックコメント募集があれば、性教育を進めてほしいと投稿する、といった私たち市民ひとりひとりの行動が必要でしょう。ひとまかせにしていては何も変わりません。私たちは今の世を生きる、当事者なのです。

講演の終わりのほうに、老年期に豊かな性を持とうという話がありました。村瀬さんの配偶者が閉経後、そして村瀬さん自身が勃起射精がなくなってきてからのほうが、性生活が豊かだった、たのしめたとのことです。勃起も射精も無くってOKなんです。勃起にこだわる価値観(古い「足場」ですね)を脱ぎ捨てられているから可能なことだと思いました。そして互いを尊重し信頼しているからこそでしょう。これまでのふたりが、性生活のみならず関係性が豊かだったからこそです。

村瀬さんの時代、私の時代もそうでしたが、女子だけ性教育(というより、月経の処置教育ですね)を受けていました。女子は妊娠するから、という理由ですね。でも、男性は孕ませる性なのですから教育が要らないはずはありません。男の子にこそ、からだについての知識、生理的な学びだけでは不十分で、相手を尊重する人権意識を育てる必要があるはずです。

最後に。村瀬さんは長年つれそった大切な配偶者を最近、亡くされたそうです。たいへん大きな生活の変化に襲われているが、村瀬さんはそれを本に著したいとのことです。辛い変化なのだろうにと拝察しますが、誰も書いていないことだから、書くのだとおっしゃっていました。来年には出版されるのではと思います。本が出たら早速手に入れたいと思います。

東京在住の村瀬さんですが、出身は名古屋市です。「東京から名古屋は近いよ」と、9月の暑いさなかでしたが名古屋までおいでくださいました。本当にありがとうございました。

2024年9月8日 市民公開講座のおしらせ

来月、9月第二日曜日である8日の午後2時からです。院長(小栗)が所属する、愛知県保険医協会のリプロダクティブ・ヘルス部が主催する市民公開講座です。どなたも無料できけます。

現地参加のほか、オンラインで自宅からでも聞くことができます。

演者は村瀬幸浩さん、性教育界の大御所です。今もお元気で活動中です!

申し込みはオンラインまたはファックスで、できます。

ウェブ受講は地理的な問題や天候の問題に関わりなく便利ですね。

村瀬先生のあたたかい人柄に触れられる、現地参加もおすすめです!

著書は学問的な本から一般の方に分かりやすい本まで数多く、私は村瀬先生の著書のおかげで性教育を下地から学ぶことができました。そして専門学校での授業や講演を行ってきました。本の内容はけっして難解ではなく、なにより、腑に落ちるのです。

最近ですと、「おうち性教育はじめます」が大評判です。2020年に3歳から10歳くらいまでの内容で出たもの(左)、そして2022年の思春期・家族編(右)があります。画像はAmazonで、2024.8.12に掲載されていたものです。

HPVワクチンを打ちましょう!!キャッチアップ接種の期限はあとわずか!!

子宮頸がんの原因である、HPV(ヒトパピローマウイルス)。そのウイルスに対し免疫を身につけるためのワクチンが、HPVワクチンです。

HPVは、性行為を経験すると8割のひとが暴露するウイルスです。つまり、特別でなくありふれたウイルスであり、男女ともかかわるウイルスです( 注1)。200種類ほどの型があり、そのうち15ほどの型に発がん性がある、つまりハイリスクなのです。このハイリスクHPVが子宮頚部に感染しつづけてしまうと、数年から十数年で発がんしてくる可能性があるのです。そして、困ったことにHPVを殺す薬というものは無いのです。

(注1)オーストラリアなど20カ国以上で男の子にもHPVワクチンは公費接種されています。日本ではガーダシルというHPVワクチンは9歳以上の男性に適応がとおっており接種可能です。公費負担かどうかは自治体によります。

しかしワクチンをうってHPVへの免疫をつけ、そもそもHPVの持続感染をさせないようにすることは可能なのです。

性交を始める前、つまりHPVに暴露する前にワクチンをうって免疫をつけることができるのがベスト。しかし性交経験のあとでも、まだ感染持続となる前であれば間に合うので、ワクチンをうつ意義はあるのです。

ワクチンは3回うつ必要があり(注2)、コストはシルガード9の場合、1回につき3万円近くかかります。小学校6年生から高校1年生相当までの定期接種であれば費用は公費負担(つまり無料)です。

(注2)  一回目の接種年齢が15歳未満であれば二回接種で終了です

そして、今年度はキャッチアップ接種という特別な制度の最終年度です。1997年度から2007年度にうまれた人であればやはり無料で接種することができます。

キャッチアップ接種ができるのは、今年度末、2025年3月まで、です。それまでに3回接種を済ませるためには遅くとも、9月までには一回目の接種をすませる必要があります。スムースに3回接種するのに半年かかります。途中で都合が悪くなったりして接種予定が延び、半年以上かかることも少なくありません。キャッチアップ対象年齢の人は、すぐにでも一回目を接種することを強くお勧めします!!

平和のつどい2024

もう、2週間ちかく前になりましたが、春日井市 東部市民センターで開催された平和のつどいに参加してきました。会場の多くは、戦後に育った世代、また私のように戦時中に人生を送った親を持ち、戦争のことを小さいころから聞いてきた世代でしたが、ジュニアの方や若い方もいらっしゃっていました。

もとイスラエル軍兵士の、ダニー・ネフセタイさんの講演はわかりやすく、胸を打つものでした。講演を聞いた人が、家に帰って子どもたちや孫たちに伝えたいという意見をうけて出した本が、ことし3月に発行された「どうして戦争しちゃいけないの?」だそうです。

下表は講演中、ダニーさんのスライドをみて書き留めたものです。戦争がいかに悲惨なことかを示します。イスラエルの新聞記事にあった数字で、2023年10月ハマスの奇襲後これだけ精神疾患が増えたということです。信じられない高さです。(見間違い?いや、たしかにスライドをみながらメモしました!)もともとの罹患率が高いのは長年にわたり国同士が暴力の応酬をしているためでしょう。

奇襲以前%奇襲以後%
PTSD1630
うつ2443
不安症3144
自殺願望38
ダニーさんいわく、もともと国民の16%がPTSDだなんていう国は、ないよね?!と。

会にさきだち私は挨拶を3分くらい述べました。私は婦人科の医師として外来診療と、性教育にもかかわっています。性教育というと科学的な正しい知識が必要ですが、大事にしているのが性的同意です。一方的な性、支配的な性は言語道断です。互いを尊重しあうことが絶対必要、つまり性教育は人権教育です。そして、いやな性的接触にはNo!を言おうと教えます。「嫌、やめて!」と声をあげること。それにも訓練が必要です。

あたりまえにNoを言って良いと言われて育たないと言えない人になってしまう。これは性的な場面だけでなく、人生のあらゆる局面における決定力、権利の実行力です。わたし自身はそういう訓練のないまま、いい年になってしまいました。それでいま、特に女の子たちに、嫌なものは嫌と言っていいんだよ、と言っているんです。

はっきりNo!と言い慣れていない人は、私だけでなく、日本人には多いのではないでしょうか。ところが最近いやと言えないムードにどんどん拍車がかかっているようです。2013年に強行採決された秘密保護法や2017年成立の共謀罪法(注1)、今まさに問題となっている地方自治法の改正案(注2)。まるでNoを言う権利など忘れてしまえと言わんばかり。とんでもない。戦争はNo。平和外交をもっと行うべきです。

注1,2の参考リンクはどちらも日本弁護士連合会のサイトです

2024年5月26日 平和のつどいへ、どうぞお越しください!

つぎの週末、日曜日に、春日井市東部市民センターで「平和のつどい 2024」を開催いたします。

私 小栗明子は春日井9条の会、世話人のひとりです。つまり、このつどいを主催する団体の一員です。そして、開会のあいさつを述べさせていただきます。それにあたり、ダニーさんの近著2冊を読みました。

とてもわかりやすいのです。時にユーモアも含む読みやすい文。日本語です!