DVと夫婦喧嘩

最近、兵庫医科大学法医学講座教授、西尾元 先生の著書を3冊読んだ。

2017年と2019年4月に出た「死体格差」「いまどきの死体」

2019年12月に出た「女性の死に方」

解剖にはいくつか種類がある。西尾先生は、下記の分類3,の法医解剖の教授。年間200-300の解剖をなさっているという。…ドラマだと監察医と法医学者と、ごっちゃになっているようだ?

  • 監察医が行う解剖:監察とよばれる組織(東京都など限られた大きな都市で、公衆衛生の向上を図ることを目的に設立された組織)で行われる。
  • 大学で行われる解剖
    1. 系統解剖 学生の解剖学の学習のための解剖。解剖学教室が担当
    2. 病理解剖 病院で亡くなった方の診断の確認、治療の効果を調べる解剖。病理学教室が担当
    3. 法医解剖 犯罪捜査と死因救命を目的とする解剖。法医学教室が担当

警察から随時、解剖の要請があるのに応じなければならない。淡々とかいてあるけれど 腐敗した死体、ミイラ化した死体、なんと大変な仕事かと思う。それだけではない。おや?と思うことを見逃さないよう、たいした修練が要ることである。後進が、どんどん出てきてくれているのかどうか。

「死体格差」の104ページには、”全国にある法医学教室はおよそ80教室、法医学認定医はせいぜい150人程度 イリオモテヤマネコの推定生息数とあまりかわらない”とある。絶滅危惧種に例えられる。あ、これは産科医もそうだ。ひとの生まれるところ・死ぬところにかかわる仕事は、なり手不足なのだなあと思った。

「女性の死に方」に、”夫婦げんかで死を選ぶのは決まって男性ばかりである”とあり注目した。プライドが壊された結果、妻がいかに携帯を使って止めようと、崖から身投げをしてしまったり。戸外で凍死してしまったり。一方、DVでは、全身殴打により亡くなった女性の例が書かれていた。日常ビール瓶などで殴打されてできた皮下出血、そのため亡くなった。別の大学の先生から送られたアメリカの皮下出血症例を集めた報告書が鍵で、解かれた死因だったという。…皮下出血が一定範囲以上おこると死に至るのだ。はじめて知った。

DVは一方から他方へ向けての暴力・支配であり、けんかとはべつものである。DVのことを「これは夫婦げんかだ、」とごまかすのは許せないのである。

陰毛処理すると清潔なのか??

陰毛処理 今日このごろは外来で毎日見ない日がないくらいありふれた 陰毛処理をした人たち 

10年以上まえ、年に数人、陰毛処理をしている20代の若い人たちがいて 私は気になった。陰毛を、すべて あるいは膣周囲にかけて処理している。理由を問えば、つきあっている彼からいわれて不承不承、やっているという。

それがいまは年齢層が広まった。中高齢のひともやっている 加齢すると なにもしなくても陰毛は寂しくなる(減る)のだが,,,。自分で剃ったり、老いも若きも数十万かけてエステに通ったりしている。

外陰の皮膚はからだの他の部分とは異なる。薄いのだ。直下の脂肪組織が薄い皮膚によっておおわれ、ふわふわした大陰唇とデリケートな小陰唇粘膜に続いている。陰毛をなくしてしまったあと、ひりひりした外陰部の皮膚を目にするたび私は悲しくなる。じっさい、接触性皮膚炎などのトラブルで来院する患者さんも多いのだ。とくにこの頃は外出自粛が関係してか、多い。

陰毛は、よく、桃やりんごにかけてあるネットと同じ役割をはたす。デリケートな皮膚を保護するのだ。

そして薄くても空気の層ができるので蒸れの予防にもなる。陰毛のせいで蒸れるというのは違うのではないか。Gパン、スキニーのズボンやガードルなど、しめつける衣服のために蒸れているのではないだろうか。素足でスニーカーを履くのと、薄いストッキングを一枚はいて履くのと比較してみると、ストッキングを履いているほうが蒸れない。それと同じである。

手足の脱毛は、ひとの目にふれる場所の処理である。それに対して外陰部の脱毛は意味がちがうと思う。

2013年9月22日号の婦人公論(中央公論新社)で林真理子・壇蜜両氏の対談記事があった。記事のなかで壇蜜氏は、彼女自身が外陰脱毛したことを明らかにしている。林氏の「昔、陰毛のない女性のことを、どうしようもない淫乱だというので男性から畏れられていたと言いますけれど」に壇蜜氏は「現代に置き換えると、淫乱というのは誰とでもできるという意味で、結果として女神さまになるという計算なのです」と返答している。言葉の選択がすごい。陰部脱毛の意味 彼女の言うことだから間違いはないのだろう。

おかしいなと思うのは、介護をうけるために陰毛を無くする、という意見である。自分が将来介護を受けることを考え、まえもって無くしておくというのだ。それでは今現在の介護現場で、そのような声が上がっているというのだろうか?陰毛がないほうが介護しやすいから処理しておくべきだという意見が出ているのだろうか??介護職に就く患者さんに聞いてみると、そんな話は聞いたことがない、あんまり関係ないと思う、という意見だ。私も高齢者施設に入所中の患者さんを診察することがあるけれど、同感である。

清潔のため陰毛処理を とエステで言われたと患者さんは言う。強い違和感を感じます。

外陰や膣は 口のなかと同じ 多くの菌が棲んでいる。皮膚や腸内も同様である。多様性のある菌叢(きんそう)のおかげで恒常性が保たれノーマルな環境が維持できている。陰毛を処理するかしないかで、清潔かどうかが決まるわけではないのである!

話は違うが、低用量ピルについて。

低用量ピルは 日本の高い承認ハードルを超えて避妊薬として認可されたのが1999年9月である。2008年には保険診療で用いる月経困難症治療薬としても認可された。

低用量ピルの連続服薬(数ヶ月、ピルを飲み続ける。年に数回、休薬して出血を起こす)について、2006年に海外の演者が日本でレクチャーしたものを私は聞いた。このレクチャー受講者は限られた産婦人科医師ではあったが、ピルを数ヶ月にわたって連続服薬することについて、14年前にすでに、国内の医師たちが話をきかせてもらっている。

なのに日本でのピル服薬については遅々として進んでいない。連続服薬どころか、古典的なピル服薬(3週間のんで1週間休薬して出血を起こす)についても遅れている。日本では、ピルを使用可能な年齢の女性での使用率は3%からせいぜい5%だという。

いっぽう、陰毛脱毛はどうか。私が気に留めはじめたのが12年ほど前である。その後10年あまりであっという間に世間にゆきわたっている。この速さはどうだ。あきれてしまう。速さの理由は何か?それは脱毛業界の懸命さ、宣伝(コマーシャル)のすごさであると私は考えている。

身長に見合った体重がほしい!

コロナ感染予防のため外出を控えるなか、体重が増えて困るひとがある一方、痩せっぱなしのひともいらっしゃる。痩せたかたは往々にして月経不順となり、婦人科にいらっしゃるのである。

BMI(body mass index)という言葉がある。びーえむあい、いまどきの子は中高生からちゃんと知っている。健康のため適正なBMIは?と尋ねると18だとかの答えが返ってくるが、とんでもない。こたえは22から23.それが一番いろんな病気をしない数字なのである。いっくら引き締まって若鮎のような体だとしても、21かせいぜい20までであってほしい。NHKのテレビ体操にでてくる女性たちぐらいがいいなぁと思います。

身長が140cm台だろうが160cm台だろうが、体重は40キロ台で居たいようなのである。

マスクによる肌荒れ…「うる星やつら」を思い出した

コロナウイルス感染予防として、これまでになくマスクを着用するようになりました。それで皮膚炎を起こすことがあります。蒸れとこすれが原因です。この、マスクによる皮膚炎のことをブログに書こうと思っていたら今日(6月1日)の午後、NHKラジオでも話題になっていました。

昔読んでいた人気漫画の「うる星やつら」を思い出しました。主人公、宇宙人美女のラムちゃんがつけていたマスクを、あたる(地球人の主人公)がつけたら つけた部分の皮膚におかしな模様がついてしまい、ラムちゃんのマスクをつけたことがばれるという話がありました。ネットでみたら「宇宙かぜパニック」というタイトルでアニメ放映されたようです。

作者の高橋留美子さんも、マスクをつけたときに肌の調子がおかしくなって、それで、この話をつくったのかなと思いました。

あらためてマスクの効果について、どうなのでしょう。新型コロナウイルスが登場して、これまでマスクなんかつけないでいた欧米人たちも、しっかり?つけています。

CDC(アメリカ 疾病対策予防センター)の「パンデミックインフルエンザ予防のための地域社会伝搬軽減ガイドライン」2017 にはこう、あります…「マスク着用は、汚染した環境に接触した手で自分の鼻を触るなど、自分自身への接触を減らす」これです。これがポイントだと思います。